寄稿・みんなの作品

【孔雀船96号 詩】 ビスケット謀反す

ふわっ、

と、ひと吹き

素肌を駆け巡る

春の風はひとり旅

おちこちに孤独が降り積もっている

花びらのように

空には気難しい

オゾンの穴

取り返しのつかない人間の業

ぼくの武蔵野夫人は天を仰いで

ビスケットを一枚

カリリと噛んだ


仲直りした夫婦が垣根越しに

手をつないで通り過ぎる

永遠とは瞬間のことなのだと

悟る

もうすぐ穀雨ね、と

えくぼを作る

「奥さん、お届け物です」

玄関で配達人の明るい聲

春の風を払いのけ

素肌を脱ぎ捨てて

夫人が出てゆく

春の風は嫉妬して

テーブルの上のビスケットを吹きとばす

謀反は起きた

「あらあら大変」

夫人は掃除機と格闘する

慌てて地球が傾ぐ

時間が永遠を噛み砕く

春のひととき

ふわっ、と。


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【関連情報】

孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。

「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳

〒185-0031
東京都国分寺市富士本1-11-40
TEL&FAX 042(577)0738

イラスト:Googleイラスト・フリーより

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