A040-寄稿・みんなの作品

【寄稿・詩】  卒業電車 ☆神山暁美☆

山のふもとにある ちいさな町の小学校


校庭をとりまくフェンスの向こう側

授業と授業のあいだの休み時間に

毎日きまって赤い電車が走ってくる


あすは卒業式 六年生はさいごの授業

「つぎの休み時間は校庭に集まってください」

担任の先生のことばがチャイムにかさなる

でも みんなは集合の理由(わけ)を知らない


ウィーンウィーン ガタゴトガタゴト

いつもの電車が菜の花をゆらしやって来た

先頭(せんとう)の車両に運転手と もうひとり

紺(こん)の制服・制帽(せいぼう) 真っ白な手袋(てぶくろ)で敬礼をして


在校生もふり向くような まのびした警笛(けいてき)

止まりそうなほどゆっくりと電車が通る

その窓のひとつひとつに大きな文字が


「祝 卒 業 ・ 夢 の 実 現」

白い手袋はこの小学校の卒業生

若かった校長先生が始めて送り出した

「電車の運転手になる」と約束した男の子

いま この町の駅長さんになっている

            卒業電車 ☆神山暁美☆ 縦書き・PDF


関連情報

 神山暁美さんのプロフィール

 岐阜県大垣市生まれ

 詩誌「那須の緒」同人

 栃木文芸家協会 会員

 日本ペンクラブ 会員 電子文藝館委員会・委員


 詩集「卒業電車」 定価 1500円+税 

 問合せ先 : オフ出版

         〒250-0124  神奈川県南足柄市内山772
           ☎     0465-72-0033  

「寄稿・みんなの作品」トップへ戻る