寄稿・みんなの作品

【寄稿・新型コロナの知識について】(下) 抗体とはなにか=井上園子

 新型コロナウイルスの第2波はいつ襲ってくるのか。そのときはどうするべきか。実態がわからないものにたいしては、人間は不安で、戦々恐々(せんせんきょうきょう)とする。

「東京アラート」が出された。また、すぐに引っ込めるらしい。
「それってなんなの?」
 よく解らないな。
 青とか、赤とか、大阪のバクりだよ。
 これが巷(ちまた)の無難な回答かも知れない。

 写真:ネットより(グーグル・写真フリー)


 来月は、東京都知事選(18日告示、7月5日投開票)である。「東京アラートなんて、現都知事の巧妙な選挙運動だ」と、毒舌の対抗馬が批判する。

 現職の彼女(67歳・兵庫県生れ)は、まだ立候補を表明していない。意思表示をすれば、そうそうテレビには映してくれない。公平感を失くするから。
 いまはカタカナ英語を乱発して、彼女はテレビに出まくっている。

 巷の声を拾ってみた。20-30歳代の将来をになう若者たちに。


「67歳って、初老だろう。初老がコロナに感染すれば、恐怖だ。だから、怖い、怖いと、騒ぎまくっているだけさ」
「そういう見方もあるか」
「だってさ、若者が愉しくあつまる新宿・歌舞伎町をヤリ玉にあげて、夜の街を悪玉にしているんだよ。これって、3.11のとき流行った「風評被害」にちかいかもね」
 福島原発で、放射能汚染の野菜、果物と風評被害で、農民を困らせた。

「あれも、可哀そうだった。こんどは、歌舞伎町で働くひと、遊ぶ人、呑むひと、若い世代がコロナで風評被害を受けているんだ」
「コロナの感染者は、歌舞伎町で1日5人くらい? 盲腸炎の発生率よりも、少ないんじゃないか」
 1200万都民が1日20人の感染者にしたら、0.00000166%だ。これでアラームかい。

 若者の声が、都庁のトップには届いていないらしい。

 赤い色のレインボーブリッジ、東京タワー、新宿の都庁が観光名所になったくらいか。大勢が出かけていく。外出の自粛なんて、よく言うよ。まるで逆じゃないか。

            *


抗体とはなにか】2回続けてきて、最後に、もう一度、井上園子さんに語ってもらいます。


 人間のからだは骨、神経、筋肉、脂肪、血液、すべて細胞でできています。
「血液も細胞ですか」
「そうです。ことごとく『ヒト細胞』と呼んでいます」

 怪我をして、皮膚から病原菌が入ると、からだはどんな働きをするか、ご存知ですか。人間は高等動物ですから、自己防衛できます。

 私たちは日常、物を食べますと、口から細菌もウイルスも同時に入ってきます。腸の粘膜には、体中の白血球(免疫細胞)の70パーセントが集結していて、胃の胃酸を潜り抜けてきた細菌やウイルスがいます。

 白血球は、それら異物を呑み込み、細菌を分解したり、食べたり、消化したり、破壊してしまいます。
「この働きをするのが、食細胞(しょく さいぼう)と言います」

 ところが、インフルエンザ・ウイルスがヒト細胞に入りこむと、
「憎きウイルスを捕らえて、食べてしまうのかと思いきや」
 食細胞は、自分の仲間の細胞かと誤解して、なにもできなくなるのです。


「食細胞って、軟弱だな。弱いんだな」
「悪かったわね」
「人間の細胞の破壊とは、おだ仏か」
「はい。御臨終です」
「冗談じゃない。頑張ってくれる細胞はいないか」
「それでは探してやる」
そこで、防衛力の強い細胞を探します。だって、人間は本能的に死にたくないし。
「いたぞ、いたぞ。NK(ナチュラルキラー)細胞だ」
「キラーって、殺し屋か」
「そうさ。生まれつきの殺し屋だ」
「からだのなかに、殺し屋がいたなんて、初耳だ」
「ひと呼んで、リンパ球だ」
 全身をパトロールしながら、がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ次第攻撃するんだ。

「殺し屋のリンパ球さま、NK細胞さま、ウイルスが私の細胞に入り込みました。拳銃でも、槍でも、刀でもいい。殺してください。あなたの出番です」
「ここは、腕のみせどころだな」
 NK細胞は、ヒト食細胞を殺した敵(ウイルス)の増殖をおさえはじめるのです。

 すると、マイクロフィージャ、樹状細胞、好中球といったなどが総動員されて、あらたなる戦争をはじめるのです。

 ウイルスの大きさは、0・1マイクロメートルです。数えている暇はない。ともかく戦うのみだ。この戦争は、初期段階の「食細胞」と「NK細胞」が攻撃と防御をくり返します。

「ギブ・アップ」
 
 ここで勝てないと、より高度な防衛が必要です。それが二段階の獲得免疫です。

「まだ死にたくないよ。ぼく人生でやりたいことはいっぱいあるんだ」
 白血球は、骨髄で産生される。からだがウイルス、細菌、寄生虫に攻撃されると、突然、免疫アラームが作動する。
「そんなややこしいことは、どうでもいいんだ。早く治してくれ」
 この間にも、強敵のウイルスがなおも強烈な攻撃をしかけてくる。初期段階(自然免疫)の樹状細胞が、食べたウイルスの一部(抗原)をもって、リンパ節のT細胞に知らせに行く。
「最後の出番は、いよいよ、俺さまだ」
 戦争でいえば、T細胞から分化したキラーT細胞とB細胞が放出する抗体は、大砲や小銃の弾で、ウイルスとの防備戦線に、次つぎに運ばれてくるのです。
 
「そんなの。どうでも良いんだ。治してくれよ」
「わめくな。ウイルスを攻撃してください、B細胞さま、というんだな」
「おねがいします。3番目に出てきた、本命中の本名の防禦隊の皆さま」
「それならば、ベッドに横になりながら、聞いておれ」
 
 リンパ節は、ヒトの体中に300から600個あります。大きく重要なものは、喉の扁桃腺、肺、脾臓・腸です。
「リンパ節が腫れても、治ってくれないや。ぼく死んじゃうの」 
「次の手で行くか」
 キラーT細胞とB細胞の各一個では、防衛力が足りないので、クローン拡大して、敵に対抗できるまで、数を増やします。
「クローンってなんなの?」
「それも知らないで、よく人間をやっているな。かんたんに言えば、一卵性双生児だ。Y字型抗体(一卵性双生児)という。次つぎに連鎖で拡がっていくのさ。敵をやっつける抗体を一杯つくるんだ」
「それってネズミ算といわない?」

「だまって、ベッドに寝ていろよ。わが白血球(免疫細胞)が勝利するまで」
「わかった」
「ほんとうに、解っているのかな。人間っていいな。免疫や抗体を学ばなくても、俺たちの知らないうちに、ウイルスを攻撃させて、治すんだから」
 ウイルス感染が抑えられると、増殖した細胞たちは死滅して通常数にもどります。

           *  

 敵の抗原が初感染か否かにより、B細胞の機能が異なってきます。初めての感染では、抗体の量が最高になるのに、10日間ほどかかるのです。
 おなじウイルスと戦った経験があると、5日間で最高の量になります。つまり、抗体ができれば、抵抗力がつくのです。
 かれらを信じ、がんばって、とエールをおくりたいものです。

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