A040-寄稿・みんなの作品

【寄稿・新型コロナの知識について】(中) 抗体とはなにか=井上園子

 新型コロナウイルスの予防ワクチンについて、メディアではいろいろ取りざたされています。
 専門家は、いとも簡単に、こういいます。  
「はやい話しが、コロナの抗体をつくれば、感染しないことです」

 そんな説明されても、【抗体】とはなんなの? そこが解らなければ、チンプンカンプン、まったく意味不明です。TV局に出演する医者は、平易な説明ができず、ひとりよがり。
 まるで、医科大学・大学院の教室で、小学生が聴講しているような感じ。

 そんなのを引っ張り出してくるテレビ局のプロデューサーも、視聴者のだれが理解できるのか、それすら解ってないんじゃないの。
 

 人間のなかに、「抗体」はどのように存在しているのでしょうか。

 井上さんに、(上)に続いて、文章と絵で説明してもらいます。


井上さんのレポート

 抗体そのものは、グロブリンというタンパク質からなっています。

 皆さんが受診される健康診断には、血液検査の項目に、「白血球」は必ず入っています。その白血球には、8種類の免疫細胞が含まれています。

 その中の一つが、抗体を作るB細胞です。ことばを代えると、白血球のなかで、抗体は生まれます。
 生まれたB細胞は、たくさんのY字型抗体をミサイルのように発射して、敵(ウイルス・病原菌など)に付着します。抗体が付着してしまった敵は、
「参った」
 となり、ヒトの細胞に侵入できないのです。ギブアップして、もはや増殖できず。私たちのからだの炎症はなくなります。

 つまり、私たちの白血球のなかにB細胞の「抗体」ができれば、それが防衛力を発揮し、弾丸として「ウイルス」を攻撃し、その活動を停止させて感染拡大にならないのです。
 
 図で、説明しますね。



(画像の上を左クリックすれば、大きくなります)

           *

 白血球の数は、正常血液1立方メートル(一辺が1ミリの立方体の体積)当り4000から10000個です。

「ウイルスが侵入したぞ」
「どこだ」
「ノドの粘膜と、眼球のようだ」
 こうした異常事態のサインをうけとると、ふだんは丸っこい抗体の彼らは、アメーバのように体をくねらせ血管を通り抜け、敵が侵入した現場に攻撃にいくのです。

 とくに防御が弱いと、体の炎症が強くなり、白血球の値は基準値を超えてきます。それ自体は、白血球が増殖して、敵と戦っている証拠です。
 炎症は私たちにはとても辛いものですが、白血球が敵と戦いを優位するための手段です。

 私たちが風邪で熱が出たときは、白血球、つまり「免疫細胞」たちが敵と熾烈(しれつ)な戦いをくり広げているさなかだと、想像してほしいのです。

 しかし、抗体だけが細菌、ウイルス、ガンなどから守っているのではないのです。からだを造る一つひとつの細胞を含めて、すべてが情報を伝達しあい、私たちの体をつねに守っているのです。


「ウイルスめ。油断も、すきもない奴だ。鼻の粘膜から突入してきたぞ」
 敵であるウイルスが、鼻孔(びこう)入ったとします。


 闖入したやっかいな敵は、ヒトの細胞に穴を開けて入り込み、その栄養を吸い取り、なんと一個のヒト細胞から、約1000個まで増殖します。
 なおも、敵はヒト細胞を次つぎに破っていきます。

「たいせつなノドの細胞、肺臓の細胞までも、むしゃむしゃ食べはじめた。畜生」
 24時間後には、敵のウイルスは1万個にもなる。もう天文学的な数字になっていく。

 1万個になると、ふつうの風邪のような喉の痛み、鼻汁、咳などに加え、38度以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛といったインフルエンザ症状があらわれてきます。

                 *

「やられたら、やりかえせ」
 侵入されたヒト細胞は、ただ敵のウイルスにやられたままではいかない。すぐに、「敵にやられた」というサインをまわりの細胞にだします。


「こやつめ。このコロナの敵は強烈だな」
 鼻や肺臓のまわりに常駐する食細胞という、免疫細胞たちが、敵(ウイルス)を食べはじめます。
 大きい食細胞はマクロファージ、その2分の1の、小さい食細胞は好中球、ほかに樹状細胞がいます。

 好中球は、免疫相棒の中で一番数が多いのです。だが、その寿命は短い。敵を食べると、すぐに死んでしまうのです。
「応援だ。応援をよこせ」
 血液からは、応援の仲間が次つぎにやってきます。


                      『つづく・(下)』  

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