【寄稿・詩集「未完の風景」より】 天上の青=神山暁美
更新日:2020年4月 3日
きりりとねじった蕾を
いつのまにかほどいて
青をひろげる朝顔
心のかたちした葉先が
おとこの眸にゆれる
「しずかな夏だ」
つぶやきながらおとこは
記憶の襞をたたむように
まぶたをとじた
わずかな色の差で
水平線をたしかめる
ただひとつの敵影も
見逃すわけにはいかない
双眼鏡を手に
おとこは艦橋に起(た)っていた
視界を満たすのは
緊張の青 蒼(あお) 藍(あお)
明日はない
今だけを生きて
空に海に
散っていった者たち
ヘブンリィー・ブルー
『天上の青』と和名をもつ花は
咲ききった昨日いちにちを
しっかりと握りしめたまま
今日の庭を紅に彩っている