【孔雀船 95号 詩】 魔物のノート 冨上芳秀
更新日:2020年2月17日
兄さん
写真を撮らせてくださいな
この子の七つのお祝いに
人を呪わば穴二つ
あなたの二つ穴をふさぎたい
塞ぎの虫を呪って
ウサギは駆けていった
生活に疲れた老女は
穴に入ったウサギの後を追って
ウナギのように
ぬめりとすり抜けて行った
穴の向うは別世界の月世界
齧歯類が可愛い前歯を見せて
人参を齧っています
虹を渡ってわななく思いを
渡月橋
トゲトゲしく
棘の増したサボテン女の
ラテンのサルサ
さる差しさわりの
あるいは何を
さらしの猿股事件
真相をさぐると
恥晒しの笹の葉
サラサラと
桜咲くササラ踊り
サザエのつぼ焼き
焼きシイタケ
虐げられたメシアのメシヤ
おい、そこの飯屋で
一杯やろうかと
兄さんはやけに気安く
私を誘ってくれましたが
これも気休め
骨休めと
酒を飲みながら
私を慰めてくれたのも
魔物の女の兄さんの
深い企みが
あったからですね
【関連情報】
孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。
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