【孔雀船 95号 詩】 続・夕霧の墓 望月苑巳
更新日:2020年2月17日
夕霧のまぼろしふりしきって
擬宝珠がてらり
橋は渡す
息は渡す
お兄さまはいつ帰られましたの?
ほれ
朝もすっかり暮れて
すでに萎れましたわ
それだけではるは
つめたくあさい
目覚めを
求めていましたのよ
手水はぬらし
墓にぬらし
愛でて
さくら散らす
兄さまは涙に枯らすのですか
六条の辻から
読経が跳ねて
かりがねのつばさに雪の名残が
ほれ
兄さまこの道は
戻れない
夕霧の怨み
二度とできない影踏み
愛し
源氏物語のページ
夕霧をまたかすみ
つつみ隠すのですね
【関連情報】
孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。
「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳
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イラスト:Googleイラスト・フリーより