寄稿・みんなの作品

【孔雀船 94号・詩】  水性の夜 船越素子

一番星がのぼって

教え子が物語をとどけに来た


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静かな彼女だ

うつくしい夕暮れの風とともに

静かにてわたす

物語も静かに

静謐な室内で綴じられる


暴発も 諍いも 騒乱も

ここでは

何もかもが

呼吸の音も消えいるように

霧散していく

送り出された

ふたりの少年は

はるか時空をこえ

彼らのスペースシップがすれ違い

たがいを呼びあう


彼女の物語は

痛ましいほどに美しい

やさしい人々が

やさしさの傷を負い

レモン水のかけられた

かきごおりのように溶ける

水性の夜の 

再生や降臨が

その先にあるのか

誰もとわない


だから ゆっくり

ページを繰る

あたたかな飲み物と

膝掛けを用意し

ひとり

星降る夜の

星をさがして

教え子に届けようと

思いついたのだ


          『ALLO:ALLO』(フナキトキコ著 北方新社)によせて


水性の夜 船越素子・縦書き・PDF
   

【関連情報】

孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。

「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳

〒185-0031
東京都国分寺市富士本1-11-40
TEL&FAX 042(577)0738

写真:Google写真・フリーより

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