A040-寄稿・みんなの作品

【寄稿・エッセイ】 やり直しは出来るかな = 中村 誠 

 体調が良ければ酒は学生時代から日本酒、洋酒、なんでも良かった。もちろんお相手しだいだ。不思議に二日酔いになったことはほとんど無かった。

 社会人になり、好みはまず日本酒が第一番にくる、次がウイスキー、ブランディーの順で、ワインを味わい楽しむ洒落た機会などはぜんぜん無かった。ビールはお腹ばかり膨れるし、ほとんど乾杯時にのどを潤す程度だった。アルコール類の種類が広がり始めたのは30歳に入る年の海外駐在からだ。

 アメリカ駐在の6年は、気候風土が変わったから嗜好も変化した。カナダウィスキー、バーボン、時にはマテイーニを味わった。
 輸入の日本酒は本来の美味さが乏しく敬遠した。また、次の駐在四年のドイツでは、白ワインを中心に、また生ビールとアルコール度数40度の高いシュナップス(ジャガイモから作られる蒸留酒)でドイツ人と付き合った。
 北欧出張では地場のハードリカーを好み、取引先との懇親には役立った。どこの国でも自国の酒を好む客人は歓迎される。不思議と肝臓機能には何の問題も起こらなかった。

 40年の会社生活を終え、自由人になって早くも15年が過ぎた。アルコール類の好みは〝郷に入れば、郷に従え〟の通りで、友人との懇親では日本酒、特に冷酒に戻り、時には地方の芋焼酎、あるいは麦焼酎も愛飲した。家ではワイン中心で家内に付き合った。

 数年前の人間ドックで肺気腫と診断され、大きなショックだった。現医学では肺気腫の完治は望めず、薬の服用が悪化の進行を出来る限り遅らせる唯一の方法と知った。原因は半世紀にわたる悪習慣の喫煙だと猛反省している。

 現在、外出時には携帯酸素ボンベ(6時間限度)の使用は不可欠で、日常生活の行動パターンは制限され、変えざるを得なかった。

 特に今冬、早朝の厳しい寒さの中、歩行中に呼吸が苦しくなり外出を取止めて帰宅した。この体験から体調管理のやり直しが急務と判断した。先ずは、60年近く続いたアルコール類の飲酒習慣を思い切った見直をして、今冬を実際に体験する。

 さっそく最近までお互いに呑兵衛同志と認識して付き合って来た友人には、
「12月初めの懇親会を最後に、まず禁酒を最終目標にして晩の集まりは当分差し控えております。また、最近の酷寒に打ち勝つために、日夜の体調管理に専念しており、大袈裟な様ですが〝呑兵衛中村〟の看板は降ろし、現生活パターンのやり直しと考えております。次回お会いする時には、元気な姿をご披露出来る様にがんばっております」と伝えた。

 思い切った完全な禁酒は無理なら、せめても夕食には健康に良いポリフェノール豊富な赤ワイン一杯程度は「よし」と納得して頂けるだろう。

 既にコントロールした4週間の経験を活かして、これからの本格的な冬に立ち向かってがんばろう。

                          2015.1.エッセイ教室の提出作品

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