新型コロナ時代に「忘れられた花壇」。そこで見た現実の姿 (下) = 須藤裕子
手前の芝生花壇にも草がのびのびと生え放題で、もはや、おしゃれな風景ではない。
草刈りをしない花壇は、草の勢力図の見本となり、ほぼ「セイタカアワダチソウ」の専有地と化してきた。
いわゆる雑草なのだが、なぜか花壇の花は雑(・)花(・)とは呼ばない。
「ヤブカラシ」が自在にフェンスを蔦って蔓を伸ばしている。読んで字の如し、藪をも枯らす草なのだ。
「まちの植物のせかい」(発行:雷鳥社)によると、
『蔓植物なので、自分で立つ必要も、茎を丈夫にする必要もなく、いろんな場所に摑まっては早く茎を伸ばして、他の植物より早く抜きんでて成長して光を独占してしまう』と紹介されている。
「きゅうり」の蔓のように、1本の巻きひげが途中で分かれて2本になり、それぞれが巻き付くため、簡単には外れない。
地下茎で、蔓を除去したと思っても、すぐに再生してくる』と、あり、その名前と勢いに納得する。
草が多いところでは、必ずと言っていいほどよく見かける。
『この「アカバナユウゲショウ」の英訳は「バラ色のマツヨイグサ」という。
北米~南米を原産地とする帰化植物で、明治時代に園芸植物として導入されたが、逃げ出して野生化した。花期が長く、太い地下茎だと、畑や空き地で繁殖すると厄介になる』(前書)と記す。
小さな花からは想像できないなんとも逞しい花だ。ふと、「人は見かけによらぬもの」と言う慣用句が浮かんだ。
ヨーロッパ原産の帰化植物「ナガミヒナゲシ 別名:虞美人草」が種になっていた。
観賞用として江戸時代に日本にもたらされた花だが、『まちの植物のせかい』の筆者がこ
の中のけし粒のような種を数え、2858個に驚いてしまう。
梅雨が長かった今夏、「セミ」は土の中で、気をもんでいたのだろうか、それとも、それも自然の営みかとも……。
8月1日(土)、関東地方では、梅雨明け宣言とともに、堰を切ったように一斉に鳴き出した。
羽化した「セミ」を見つけて、なんだか安心した。
滑り台の下の「セイタカアワダチソウ」が目に入った。
このままでは頭がつかえると案じていたが、迷うことなく順応していた。
コロナ禍の中、世界中でウィルスが蔓延・増加に不安な今夏、普段目もくれないようなところに、生き物のおもしろさと逞しさがあった。
ブワーン、キーンと、電動草刈り機が団地で響いていると思っていたら、やっと、公園の草が刈られて、以前の植込み風景に戻っていた。
草に覆われていた「サツキ」も出て来た。ふたたび散髪後のようにさっぱりとなった。何だか、ホッとした気分とちょっと寂しい気分が交差した。
フェンスには取り切れなかったのだろうか、「ヘクソカズラ」の蔦が残っていた。新型コロナウイルス禍で、STAY HOMEとなり、近所だけを歩き回りながら、草の顔を見つけて、知りあいだったような、気にかけていたようなちょっと明るい気分になった。
身の回りはこんなことが一杯なのだろう。
撮影・文書・編集: 須藤裕子
撮影日:2020年7月~8月