A010-ジャーナリスト

神田松鯉さんが、「人間国国宝」になる、快挙に乾杯

 神田松鯉(かんだ しょうり)さんが、7月19日の「文化審議会」で、重要無形文化財保持者=人間国宝にきまった。

 神田さんは講談界の大御所、重鎮である。
 かたや、日本ペンクラブ(PEN)のメンバー(企画事業委員会)でもある。2-3カ月に一度のPEN例会において、司会をつとめられている。
 声量が並はずれて優れているので、乾杯後のざわついた中では、一般的に司会者に耳を貸さない雰囲気があるけれど、神田松鯉さんは、そのなかでも会場の皆の目をむけさせる。さすが講談師だとおもわせる。
 アナウンスメントはとても、インパクトがある。

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 PEN会長の吉岡忍さんが中心になって、推し進めている全国各地で開催される『故郷と文学』(島崎藤村の生誕地の長野県とか)において、神田松鯉さんは文学作品を朗読される。
 1000人を超える大聴衆を作品のなかに誘い込んで、酔わせる。絶妙な抑揚と呼吸感で、ストーリーが運ばれる。

 かれこれ7-8年前になるが、PENが主催した世界フォーラム「環境と文学」において、神田さんが中国人ノーベル賞作家の莫言さん(ばく げん、モー・イエン)の作品(いにしえの中国農村の災害を描いていた)を朗読された。その時の、鶏の鳴き声「コケコっこー」は、とても、素晴らしく、いまだに耳の奥に残っている。
 招聘(しょうへい)された莫言さんの、それにたいする笑顔もすてきだった。

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「神田松鯉の会」が、「お江戸日本橋亭」(中央区・2000円)で、折々に開催されている。招かれて、ことし(2019年)5月28日の足を運んでみた。
 超満員で、舞台の背(屏風・びょうぶ)の後ろまで、観客だった。これにはおどろかされた。お弟子の「神田松之丞」がとても有名になり、これまた講談ブームを巻き起こしていると、まわりのお客さんが語っていた。
 それに、20-30代の女性が講談師となっている。
 ここ10年間で、隔世の感がある。


写真の中央が神田松鯉(しょうり)さん。 写真提供:かつしかPPクラブ

 わたしは個人的に親しくさせていただいており、「立石飲み会」にも、毎年、来てくださる。そこには、楽しく談話される素顔の神田さんの存在がある。
「人間国宝おめでとうございます バンザイ!」と祝電をお送りしたら、ごていねいに電話をいただいた。律儀な人である。

 神田さんは人間味のあふれた方である。重く太い声で、観客の心を酔わせて、強い印象を与えている。
 群馬県出身の神田松鯉さんだから、国定忠治とか任侠ものも舞台で語られる。現代流で言えば、かれらは反社会的な存在かもしれないが、人情、義理、信愛など、現代人に忘れがちものをよみがえらせてくれる。
 
 人間を語らせれば、神田松鯉さんは最上級だ、と私はおもう。 
 
《関連情報》

(公益)落語芸術協会・神田松鯉

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