A040-寄稿・みんなの作品

【孔雀船101号 詩】 耳鼻咽喉科の原っぱ 小松宏佳

診察室の前にすわって
耳にふる雨をきく
大人の男女比が一対八だったり
幼児がみな
こおろぎだったりする
九月の匂い
足音がない

問診票に問う
あとどれくらい生きられますか
人間のままでよいですか

耳鼻咽喉科.jpg聖蹟桜ヶ丘のやきとりの日高は
ペンが注文をきき
ペンが復唱した
愛らしい声は
対応をまちがえても怒らない
人に混じって機械のお客さんも増えているが
機械人は背筋と愛想がいいのですぐわかる
話しかけられたら
ドンマイ、ドンマイ

台風がくるから
変調もくる
しかたあるまい
お尻をめくり
しっぽをたらして
湿った土をなめながら帰ろう
わたしは狸
虫のなく原っぱに
雨は消えたり点いたりする

耳鼻咽喉科の原っぱ(小松宏佳.PDF 縦書き

【関連情報】

 孔雀船は101号の記念号となりました。1971年創刊です。

「孔雀船」頒価700円
  発行所 孔雀船詩社編集室
  発行責任者:望月苑巳

 〒185-0031
  東京都国分寺市富士本1-11-40
  TEL&FAX 042(577)0738

イラスト:Googleイラスト・フリーより

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