【孔雀船101号 詩】 耳鼻咽喉科の原っぱ 小松宏佳
更新日:2023年3月 7日
診察室の前にすわって
耳にふる雨をきく
大人の男女比が一対八だったり
幼児がみな
こおろぎだったりする
九月の匂い
足音がない
問診票に問う
あとどれくらい生きられますか
人間のままでよいですか
聖蹟桜ヶ丘のやきとりの日高は
ペンが注文をきき
ペンが復唱した
愛らしい声は
対応をまちがえても怒らない
人に混じって機械のお客さんも増えているが
機械人は背筋と愛想がいいのですぐわかる
話しかけられたら
ドンマイ、ドンマイ
台風がくるから
変調もくる
しかたあるまい
お尻をめくり
しっぽをたらして
湿った土をなめながら帰ろう
わたしは狸
虫のなく原っぱに
雨は消えたり点いたりする
【関連情報】
孔雀船は101号の記念号となりました。1971年創刊です。
「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳
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TEL&FAX 042(577)0738
イラスト:Googleイラスト・フリーより