A040-寄稿・みんなの作品

【孔雀船93】  リフォームする = 苅田 日出美

住みながらリフォームをするというのは

こういうことなのだと解っていたのに


解体中の廃墟のような鉄骨とシートに覆われた穴倉の

我が家に潜り込む


シヤッターもおろしたまま

カーテンも閉じ窓もすべて開けられない

騒音に耐えられなくて

初日には逃げ出して映画を見た『万引き家族』


三時すぎに終わったので

イオンの『五穀』でサンマの藻塩焼き定食

松茸釜めしを食べる

一人で時間をつぶしている


タクシーで家に帰ると

狭い庭に工事用の簡易トイレがそびえている

迷路のようなシートをくぐって

玄関にたどり着く


暗いリビングの床に座ると

夫が三十九歳 私が四十四歳のときに建てた家には

原発事故で炉の底を破壊して積もっているデブリのように

手が付けられないものがあると気づいてしまう


ひび割れた外壁を塗装して

屋根も断熱材にかえていく

あと一か月もすれば覆いも取れて

明るくなるだろうか

リフォームする  縦書き PDF


             イラスト:Googleイラスト・フリーより

【関連情報】

孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。

「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳

〒185-0031
東京都国分寺市富士本1-11-40
TEL&FAX 042(577)0738

  

「寄稿・みんなの作品」トップへ戻る