寄稿・みんなの作品

眠れぬ夜の百歌仙夢語り〈七十七夜〉 望月苑巳

 朝起きて私と顔が合うなり、我がマグロの女房殿は言葉の十字砲火、怒りにロックオンだ。台風ならカテゴリー4くらいの強さか。
「トイレを使ったら必ず窓を開けてよね」
「え~っ、お風呂の水もう抜いちゃったの、これから洗濯に使うんだったのに~。もう勝手にやらないで」
「パンツは裏返しに干さないで、タオルは端をピンとさせてよね。いい加減常識でしょ」
 終いには付録でこんな一言も。
「何でも先にやらないと気がすまないんだから。あなたは棺桶の蓋まで自分で閉める気ね」
 よく聞くと、身体が太っているので言葉も太っている。
「あなだはがんおげのぶたもじぶんでじめるぎね」
 “立て板に文句“とはこういうことを言うのだろう。苦情のデパートだ(どこかで聞いた言葉だな)。次は「勝手に息を吸わないでよ」なんて言いかねない。オゾロジヤ~。といいたいところだが、そこは大人の対応で、額を床につけ速攻で謝る
「申し訳ございません。どうかお許しください」
(ウソダピョン?)。非常識な顔(どんな顔だよ)が、もはや条件反射になっている。悲し~い。俺はパブロフの犬か(前にも書いたな)。
 でも逆に考えれば、この言葉の速射砲、実はマグロの女房殿の健康のバロメーター。今日も元気印の証拠だと考えればいいだけ。先に逝かれちゃ寂しいからな。

 次女の希望が朝シャンしたらしく〝貞子〟のような姿で降りてきた。
「オカーサン、それじゃオトーサンが可哀想。まるでカスみたいじゃない」と助太刀に入ってくれた、と思ったら続けて「オトーサンにも生きる権利があるんだから」だと。これじゃ共謀罪が成立するぞ。ファッショだ、人権蹂躙だ、祭りでワッショイ! (おちゃらけてはいけません=天の声)
 ヤケクソで「俺を空気と思ってくれ」と言ってしまった。すると、
「空気もオナラするのね」
「それはきっと空気漏れだよ」
「空気漏れってなんでこんなに臭いの?」
「腸内フローラが悪さするからだろ」
「いいものばかり食べさせてあげてるのに恩知らずね」
「どうせ町内の不良ら、さ」
 恩知らずですみません。風評被害が怖い。これ以上言うとまた反撃を喰らう羽目になるので、ただただお腹をさするばかりのオトーサンでありました。おやっ、お腹が無礼千万にもコダマしています。アブナイアブナイ。こそこそと地下の秘密の部屋へ退散といきますか。
 気分一新、天変地異、無知蒙昧が、まさかのジャーマン・スープレックスを食らって床にはべっていた本を開く。

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