A045-かつしかPPクラブ

穂高健一先生の出版記念会に、かつしかPPクラブの会員とOBも参加

 年に4回ほど行われる作品発表の例会で、いつも的確なアドバイスをしていただく、講師である穂高健一先生の出版記念会が、立石の居酒屋「あおば」で開催され、かつしかPPクラブの会員やOBも、多くが参加をさせていただきました。

 折しも葛飾図書館では、私たちやOBの制作した小冊子が一般公開されていますが、開催されたのはちょうど中日に当たる、6月15日のハナキン(死語でしょうか?)です。

 午後6時からはじまった即席の会場には、あふれるばかりの来客が、日頃お世話になっている穂高先生を囲み、酒を酌み交わしています。

 まず驚いたのは、日本ペンクラブ会長の吉岡忍先生や、会の発起人である出久根達郎先生、
それに、元朝日新聞論説委員の轡田(くつわだ)隆史先生をはじめとした、そうそうたる顔ぶれでした。

 また、出版に尽力された西元社長や渡辺社長、それに大日本印刷のご担当の方など、普段お忙しい来賓もところ狭しと席を埋め、積極的に先生と話されておられました。


 強烈な個性と豊富な見識に圧倒されてしまい、カメラを持つ手も震えてしまいます。私たちはまるで借りてきた子ネコのごとく、酒場の片隅に固まって呑んでいました。


 すると見かねた穂高先生が、例会のようにやさしく接していただき、あたたかい声を掛けてくださいます。

「きょうは出版記念に名を借りた、単なる飲み会ですよ。楽しく過ごすために、わけ隔てなく席を囲みましょう」

 私たちはほっと胸をなで下ろし、お酒の力を借りて緊張も和らぎ、取材とおなじ気分で来客と接していきます。

 ベテランの文筆家が、芥川龍之介や川端康成のこぼれ話を、わかりやすく解説してくださいます。
 とても高名な作家さんが、若いころ日本や世界を放浪したときの、恋や酒の話に花を咲かせます。気さくなある先生も、明治や大正に活躍した、名もなき庶民の武勇伝を聞かせてくださいました。

 そんな盛りあがる宴席でOBの斉藤さんが、手作りの水ようかんケーキ(あっているかな?)を差し入れてくださると、海千山千の先生方も頬をゆるめ、われ先にと指を伸ばし、なかには両手を使ってほお張るツワモノも現れました。

 穂高先生もそうですが、著名な作家の皆さんって、紳士と少年が体に同居しておられるのですね。(失礼しました!)

 そして酒宴のピークは、吉岡忍先生がお声を掛けられ、会員の秋山さんと伴って現れた賓客の女性です。
 笑顔を絶やさぬその美女は、長年にわたって穂高先生の陰になり、日向になり、苦楽をともにされた奥さまでした。

「奥さんが辛抱したから、離婚されずに済んだのか」
「日頃呑み歩いている俺たちの当てつけだろう」
「家族を大切にして、もっと稼げる小説を書け」

 容赦ないヤジと心のこもった励ましは、穂高先生がこれまでに築かれた、作家仲間のつよい絆だと理解できます。
 そして会員からも、ささやかながら色紙2枚と花束を、先生と奥さまにプレゼントしました。
 先生は恥ずかしそうに、「そんなに気を使わなくても良いのに」とつぶやき、私たちに向かいます。

「この居酒屋はスポーツ選手の色紙ばかり貼られている。店員さんも興味ないみたいだし。
これほど素晴らしい作家が集まっているのに、写真の一枚さえ飾ってくれないんだものな。でも君らに活躍してもらったら、何十年か後には伝説となって、語り継がれる酒場になるかもしれないよ」

 いつもより酔っていた先生が胸を張り、冷静な眼差しで話してくださった言葉が、ふかく胸に残りました。

 私たち、かつしかPPクラブ会員の筆力は、まだまだ穂高先生の足元にも及びません。
それでも、無名の私たちを招いてつくっていただいた、この貴重なご縁を心にきざみ、先生のご期待に添えるよう、精進を重ねていこうと、改めて決意を固める夜となりました。


文章:隅田 昭  写真:郡山利行  出版記念・題字(毛筆):秋山与吏子

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