A030-登山家

バカ尾根に登る、なぜ、バカ尾根というのか。行けば、わかる=塔ノ岳

「こんかいはバカ尾根です」

 なぜ、選りによって、リーダーはこんな山を選んだのか。  

 ふだんのストレス解消だという。

 バカ尾根の象徴である丸太階段をひたすら登っていく。

 これって、ストレス解消になるの?

 歩きづらさから、余計、ストレスがたまるのじゃないの。

 丸太の階段が、自然保護になると、信じている人がいる。

 この丸太を数万段も作るのに、ヘリで運び上げる。ヘリのガソリンは化石燃料を燃やす。

 環境保護のために環境によくないといい、人力とかで担ぎ上げる。

 なぜ、自然のままの地べたの登山道が、丹沢では悪者になるのだろうか。

 そんなことを考えながら、ただ足元を見て登る。

 ふり向けば、相模湾の美景があるのに、
 
 それらの景色にはお尻を向け、男ばかり6人が必至こいて登る。


 山桜がある。

 せめて、足を止めようよ。
 
 丸太階段ばかり、眺めていないで。


 やたら階段を登りつめると、丹沢山塊の塔ノ岳(とうのだけ)は標高1,491 mである。

 大倉なる登山口から、標高差1100メートルは、半端な体力じゃ登れない。

 だけど、4歳児を連れてきて、登らせる親がいるんだよね。
 

 もはや話題は山じゃない。

 温泉地は何処にあるか。

 これがメインとなれば、はやくビールが飲みたいね、となる

 心は山に非ず。


 下山道は、林道を予定していたが、リーダーの予想、いや予定を裏切って、通行止めだった。

 俳諧の心があれば、山桜の和歌でも詠えるのにな。

 そんな情感などわかない。

 そういえば、かつて丹沢の環境保護団体が、『シカのために森を大切に守ろう』と声高に叫んでいた。

 挙句の果てには、シカが野草の花を一本残らず、食べつくしてしまった。

 下山のさなかも、水を補給し、周囲をみわたす。

  視野のなかには山桜以外、花など皆無だった。『山に花がない』、これって、自然なの、それとも不自然なの。

見事に、シカに裏切られた環境保護団体の無責任さが、『馬鹿(バカ)尾根』のことばで象徴されている。

『保護』とかいう響きのよいことばが、曲者だ。善行だと酔っている。尤(もっと)もらしい、へ理屈並べ立てるのは、行政が大好きな見識者といわれる学者なんだよね。

 
 そもそも、日本人が日本オオカミを撲滅させたから、日本じゅうでシカとイノシシに山野が荒らされている。

 ここは外国から、オオカミを輸入して野に放ったら、解決する。


 こんなことを提案すれば、「自然の生態系」を破壊する、と学者は目くじらを立てて大反対するだろうな。八ヶ岳も、南アルプスも、高山植物は一本もない。いよいよ北アルプスも……。

 もう破壊尽くされているのに、まちがいなく外来種に生態系を狂わせると主張するだろう。

 このところ、シカから丹沢山塊の植物を守るといい、周辺には紛争国の国境のごとく大フェンス網をやみくもに作りはじめている。
 税金から払われているのかな。募金活動はしていなかったし。
  

 丹沢大倉尾根は、丸太階段とフェンス囲いのなかで、脱都会派の老若男女が、ひとことも文句もいわずに登り、そして下っていく。
 バカ尾根といわれる由縁(ゆえん)である。
 

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