A030-登山家

伊吹山と生物多様性 = 市田淳子

期日 : 2016年7月31日(日)

コース : 伊吹山 1合目~山頂~東遊歩道~駐車場~中央遊歩道~西遊歩道


   
                     イイブキジャコウソウ


 長い間行ってみたかった伊吹山に登ることができた。なぜ行きたかったかというと、特異な気候と地質、固有種の多さ、そしてお花畑を見たかったからだ。

 1合目に前泊して、31日の朝、5:30に伊吹高原荘を出発した。3合目で朝食をとる。1合目から3合目までは普通の山道で、クサフジ、ヤマホタルブクロ、カワラナデシコが咲く道を歩く。

 上に行くに従って、琵琶湖が大きくなってくる。途中、樹林帯を通るが、殆どが日差しのある草原だった。麓の方はスギ・ヒノキの針葉樹で、かつて林業の大切な林だったのだろう。
 その上は、広葉樹林体で、コナラ・ミズナラなどのいわゆる雑木林だ。かつては人々の暮らしに欠かせないフィールドだと思える。

 3合目のお花畑に着くと、フェンスで囲まれている中にユウスゲが咲いていた。柵を設けないと残せないのだろう。そして、5合目・・・と登っていった。
 山頂付近では、いくつかの花が顔を見せてくれた。

 山頂の三角点を確認し、東遊歩道へと向かった。予想した通り、柵に囲まれていた。それでも、柵の中にはクガイソウ、ミヤマコアザミ、サラシナショウマなどの群落があり、お花畑を楽しませてくれた。

 一旦、駐車場まで下りて、再び山頂目指して中央遊歩道を歩く。

 先ほど上から眺めたお花畑を下から見ることになる。そして、西遊歩道を行くと、完全に保護された区域があり、その中にはシモツケソウが我が物顔に咲いていた。
 かつては、この地域一帯にシモツケソウを始めとする植物が、百花繚乱の如く咲き乱れ、人々は中に入ってその美しさを楽しんだそうだ。

 しかし、今は保護しなければ、それらを見ることはできない。保護が必要となったのは、シカなどの食害というより、温暖化によるアカソ、センニンソウ等の繁殖力だそうだ。

 花の百名山の中でも、伊吹山は特異な存在だと思う。
 麓のスギ・ヒノキを材として使い、広葉樹を雑木林として使い、薬草の宝庫として利用してきた伊吹山。人々との暮らしが、ここまで密接な花の百名山は、他にないのではないかと思う。

 生物多様性とは、人間の勝手で作った言葉だ。人が生きて行くために必要だから、その多様性を守ろうという言い訳に過ぎない。その生物多様性の恵みを享受しているのは、野生生物ではなく人間だ。

 だとしたら、温暖化という自然の流れに任せることなく、人の手で元々あった自然の姿を守っても、神様は許してくれるのではないかと思う。

 伊吹山を訪れた後も、他の山でも同じように今、抱えている問題を目の当たりにした。山好きにどうやって自然が守れるのか。自分自身でよく考えてみたいと思う(森林インストラクー)。             

 
    ハイキングサークル「すにいかあ倶楽部」会報№205から転載

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