A030-登山家

登山者よ、気象予報士をあてにするな=北ア・表銀座(上)

 台風の影響で、山岳地帯は大荒れだって。

 天気予報を信じたのか、初秋の山岳バスはガラガラだ。
 

 ふたつのパーティー、6人が燕岳(つばくろだけ)の中房温泉で、合流した。

 天気予報で、気象予報士が、くり返し、本州は台風の予想進路上にあり、もはや前触れが出ている、海山は大荒れだと自信たっぷりに言っていた。

「行けるところまで、いく」

 そう決意した。


 合戦小屋は、悪天候でも、引き返せるぞ、という位地にある。

 混み具合は、そこそこだった。
 


 ここらで、一服するか、と登山計画通り。

 山麓に、登山届はもちろん出してきたさ。

 あくまでも、山は荒れないだろう、という予測のもとに。



 ガス(霧)が出てきたぞ。


 奇妙な石仏が、ガスのなかに浮かんでいた。

 悪い予兆か。

 燕岳の稜線に出ると、真っ青な快晴だ。

 まだ、まだ、気は許せないが、

 ザックは燕山荘(えんざんそう)において、燕岳の山頂をめざす。



 北アルプスの一座(いちざ・一つの山頂)は、登った。

 2763㍍の証拠写真は、しっかり撮っておこうぜ。

  


 ここは譲り合いの精神だ。

 山頂の美観をもっと満喫したいところだが、後から登ってくる人に場所を明け渡す。

 きょうは雨もなく、無事に登れた。

 明日の天気がやたら気になって仕方ない。

 どうなるかな、と遠近の雲の動きをみる。

 稜線にかかる雲は、気象予報士の占い?通りで、大雨なのか。

 
 夕焼けま美景が、感動を呼ぶ。

 稜線と雲海のかなたに沈む太陽は、あしたは顔を見せてくれるだろうか。


 
 大自然は、優れた画家だ。

 これだけ見事な造形をつくるのだから。

 

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