A010-ジャーナリスト

人類のピンチは、平和へのチャンスである。だれかノーベル平和賞を

 世界各国の大都市がゴースト・タウンのようになった。またたく間に、繁華街のなかに人影がなくなってしまったのだ。
 西洋諸国の人々は自由主義、民主主義のつよい意識から、政府の呼びかけを嫌う体質がある。しかし、コロナウイルス対策から「外出禁止」といわれると、TV映像を見るかぎり、かれらはふしぎなほど応じているのだ。
 
 西洋の国民が、急に素直な性格になったわけではない。「見えない敵」にたいして恐怖を感じているのだ。国内に、数百人の死者が出た以上、いつかしか、わが身に忍びよるコロナウイルスである。「身の毛がよだつ」、「背筋が寒くなる」、「怖くて、怖くて」と怖気づいているにちがいない。

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 英・米・仏・ロシアなどの大国は、中近東の紛争国へ軍隊を派遣する余裕などみじんもないと思われる。ウイルスと戦っている今、人間どうしが戦う余裕などないはずだ。

 報道を信じるならば、軍隊にはコロナウイルスの死者の棺を運ばせたり、国境封鎖の検問をさせたり、街なかを警備させたりしている。
 人類が戦う相手が、いまや敵兵でなく、ウイルスになったのだ。これを第三次世界大戦とみなす。となると、日本にはどんな役目があるのだろうか。

『人類のピンチは、平和へのチャンスである』

 ふだん「平和運動」の活動をしている民間団体、行政府の人は諸々の媒体を使って、「いまこそ平和をもとめよう」、「核兵器の放棄をしよう」と呼びかけるべきだろう。

 和平とか、軍縮とか、核廃絶とか、それらの提案を呼びかける、絶妙な好機にまちがいない。世界の多くのひとは自宅に閉じこもっているから、新しい情報発信に反応してくるはずだ。
「そうだ。戦争などしていられない。そんな軍事費はさして必要ではない。そのお金は、困窮する私たちの生活に補てんしてほしい」と考えるだろう。
 むしろ、考えない方がおかしい。
 


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 むろん、日本政府自身が、世界にむかって軍縮提案をおこなうとより効果的です。

 ……世界の町は無人化しており、経済活動が極度に低下しています。生産機械の稼働率が悪くなっています。当然ながら、失業率が急激に上がり、税収入が大幅に減ります。

 この認識にたいしては、世界中の首脳のだれもが否定しないだろう。

 コロナウイルスで閉店、失業、無収入、あるいは大幅な収入減が大勢出ています。民の声を聞く。この対応を怠ると、貧困、餓死、飢えから暴動が世界各地で起きてしまいます。

「天からお金は落ちてきません」
 
 ……生産活動の大幅な減少は、デフレを呼び込み、世界的な大恐慌へと進むおそれがあります。中小企業のみならず、大会社の倒産が連鎖を起こす。

 最悪はサーバー会社が倒産し、IT関連のシステムが機能を失ってしまうおそれが多分にあります。
 そこから産業、金融がパニックを呼び起こします。身近なところで、ATMからお金が降ろせない。コンピューター式の交通機関が動かない。株・国債の売買ができない。そのデータすら消えてしまう。資産が紙くずになる。

 天文学的な資産をもったお金持ちが、突如として、無一文になる。かれらすら生活費が生み出せない。
 世界の大都市の街にはとてつもなく大勢の失業者の群れができます。人類はおおきな犠牲と痛みを伴います。

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 細菌学の歴史をひも解くと、細菌やウイルスによって、死者の数が5000万人、8000万人、あるいはヨーロッパで一つの国家の全員が死亡した歴史があります。

 ちょうど100年前(1918)には、アメリカ本土から発生したウイルス「スペイン風邪」(ネーミングがおかしい)で、なんと世界規模で戦死者よりも、ウイルスの死者数が上回ったのです。約7000万人です。

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 アメリカ28代大統領のウッドロウ・ウィルソン(政治学博士、プリンストン大学の総長、ノーベル平和賞)が、「もう戦争などやっているときではない」と全世界に停戦を呼びかげて、終戦を実現しました。

停戦を喜ぶアメリカ軍兵士。1918年11月11日。(ネットより)

 ウィルソン大統領は、二度とこんな世界戦争をしないようにと、「世界連盟」まで立ち上げました。

 当時の日本は、世界連盟の常任理事国でした。だが、松岡外相の脱退演説が有名です。そして、またしても第二次世界大戦が勃発してしまいました。

 人間は戦争の悲惨さよりも、ウイルスの恐怖が強いのです。ここに私たちの重大なヒントがあります。
 約100年後となる今、2020年において、全世界が一致協力して最悪のウイルス被害のシナリオは避けるべきです。それには日本人の私たちは何をなすべきでしょうか。

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『見えない敵のウイルスと戦うには、武器など必要ありません。世界の各国がいっせいに軍縮しましょう。軍事費の削減を元手にしてで、社会保障費に充てましょう」

 日本政府がテレビ会談で、世界の首脳たちにそう軍縮を呼びかけていくには、よいチャンスです。どこの首相も、壊滅的な打撃を避けたいはずです。
 コロナウイルスの死亡率が少ない日本だから、冷静に世界を見ているようだ、と高い評価を得るでしょう。

 過去にはワシントン軍縮条約、ロンドン軍縮条約などがあった。そこには呼びかけ人がいて、そして各国で話し合いがなされ、大幅な軍事費の削減に成功している。
 今回は日本人がそれを提案すれば、良いのです。テレビ画面の前で、一同が揃えばよいのです。
 第一次世界大戦のさなか、ウイルソン大統領がやった手法をいまアレンジして、日本から発信すれば良いのです。

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 未来は絶望ではなく、情熱です。「東京オリンピック2020」の延期をIOCに申し出た日本だけに、軍縮提案にも耳を貸してくれる空気感はあります。
 日本にはまだ世界視野で物事をみれる、柔軟な姿勢と余力があるようだ、と評価されるでしょう。

 軍縮を叫ぶからには、わが国の自衛隊も軍縮にも、当然ながら協力してもらう。軍艦、戦車など不要不急の移動による石油消費を減らす。演習回数を減らす。それぞれ知恵を絞ってもらう。

 ウイルスと戦争しても、武器を使った軍事戦争は起こさない。政治家が担保すれば、自衛隊の立場の方も、人件費をのぞいて軍事費の圧縮を図ってくれるでしょう。むしろ、そうしてもらわないと困る。


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 オリンピックの開催には、五大陸からコロナウイルス惨禍を取りのぞくことが必須です。アフリカ、中南米がこの先、どの程度コロナウイルスがまん延するのか。それはまったく不透明です。
 研究者すら判っていません。来年か、再来年か、その先まで影響を及ぼすことすら否定できていません。

 日本政府が開催に気をもんでも、結局は出たところ勝負になるでしょう。

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 第三次世界大戦ともいえる人類危機の時にこそ、日本政府から世界の首脳にむけて軍縮、軍事費の削減を働きかけるべきです。
 世界の数億人がそれぞれ「わが命」と向かいあっています。欲望、武力戦争よりも、いまは生きることです。働けない現状の生活資源をつくることです。

 この生活危機を乗り越える、生活原資こそが軍縮です。 人間が積み重ねてきた軍備費を切り崩し、それを全世界の失業者、困窮者にまわす。これが人間のもっている英知です。ここにしか生き長らえていく原資はないかもしれません。

『ピンチは最大のチャンスです』
 やる前から諦めない。ともかくやってみる。この道は政治家として決して後悔しないでしょう。

 こういうときこそ、日本から民間人、政治家を問わず、ノーベル平和賞が出てもらいたいものです。
 

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