【孔雀船 94号 詩】 尊厳 福間明子
更新日:2019年8月23日
夜のとばりは平行線に
この香は花橘か
風に乗って闇をすくいからめて
心に届くまでにしばしの時を
心を開くまでにしばしの時を
さりげなくという時期ではありません
すでに時は迫り来ています
すぐそこにあるのは底知れぬ畏怖
坂道の途中で見つけた満開の白い花
胸いっぱいにその香を吸い込んで
振り返ってみたのです
懐かしいものがよみがえってきて
抑えきれないほどあふれてきて
すべては遠い過去のことなのですが
過去とは限りません
いま一度風に心をのせます
何処まで運ばれていくのでしょう
自由という予想もできないものに寄り添われて
運ばれていくのがわかります
わかる気分が欲しいと思うのです
それから尊厳の意味がこころよく響くあたりに
待たれているように思うのです
ほのぼの明けの彼方に
【関連情報】
孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。
「孔雀船」頒価700円
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