寄稿・みんなの作品

「寄稿・孔雀船93号」(詩誌)  桜印の殺人ナイフ 望月苑巳

赤ちゃんは白紙で生まれてくるから

泣き方が完璧なのだ

母に抱かれながら


喜怒哀楽を

乳首から思い切り吸い込む

見上げれば

へこんだ空に桜印

いつの間にか春になっている

明るい少年が

故郷を歌っている

時々暗くなって

時計回りにひねくれてしまったので

若返りの招待状を破って

貧相な大人になる

ナマ乾きの夢

つまみあげてポケットにしまう

ポケットの中で申し訳なさそうに

骨に擬態して

カラカラと鳴る

悲しい色で

大人になってこの色に染まったのか

手にはアーミーナイフが握られている

かつて赤ん坊だったころの

喜怒哀楽が

音階状にこみあげてくる

標的は

桜印の

自分自身

夕暮れの自分自身

桜印の殺人ナイフ : PDF 縦書きで読めます

                      イラスト:Googleイラスト・フリーより

【関連情報】

孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。

「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳

〒185-0031
東京都国分寺市富士本1-11-40
TEL&FAX 042(577)0738

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