【孔雀船Vol.92】 日溜り = 藤井 雅人
更新日:2018年8月 9日
池に日と空が映っていた
緑の木々のあいだ 水面の下に
ぬくもりに集う小世界のけはいがあった
蓮の葉は無数の音符となり 漂っていた
なだらかな雲のアルペッジョのうえに
日の光がゆっくりと 蜜の甘さに和むなか
自分のなかにあり 自分を傷つけていた
かたくなな幸せの形は溶けていった
宇宙のひろがりのなかに
静かで底深い 癒しの力のなかに
それは 数十年前のことだった
日溜りに 小さな歌声を絡みあわせていた
水辺の小宇宙をまた訪れようか
そして祈ろうか
おのれの心を もっと溶かしてくれるように
それが謙虚な
宇宙に宥されるものとなるように
【関連情報】
孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。
「孔雀船」頒価700円
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