A040-寄稿・みんなの作品

【孔雀船Vol.92】  日溜り = 藤井 雅人

池に日と空が映っていた

緑の木々のあいだ 水面の下に

ぬくもりに集う小世界のけはいがあった

蓮の葉は無数の音符となり 漂っていた

なだらかな雲のアルペッジョのうえに

日の光がゆっくりと 蜜の甘さに和むなか

自分のなかにあり 自分を傷つけていた

かたくなな幸せの形は溶けていった

宇宙のひろがりのなかに

静かで底深い 癒しの力のなかに


それは 数十年前のことだった

日溜りに 小さな歌声を絡みあわせていた

水辺の小宇宙をまた訪れようか

そして祈ろうか

おのれの心を もっと溶かしてくれるように

それが謙虚な

宇宙に宥されるものとなるように



【関連情報】

孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。

「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳

〒185-0031
東京都国分寺市富士本1-11-40
TEL&FAX 042(577)0738


イラスト:Googleイラスト・フリーより

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