寄稿・みんなの作品

【孔雀船Vol.92】 ひょいと=苅田 日出美

ひょいと

むこう側に

寝返りをうつようにして

転がりこむのだろうか


まし時計は

いま6時10分で秒針はすいすいと回っている

ベッドの上から

そんなシーンを眺めている


ひょいと

むこう側へ転がってしまいそうな 朝

暖房のリモコンをONにして

パジャマを脱ぐ


そういえば

これまで生きてきた時間のなかで

ぷっつりと切断された時を

二回だけ経験したことがある


手術のために全身麻酔をされて

気がついたときには何も覚えてはいなかった

夢をみるとか親しい人の声を聞くとかいうこともなく

数時間は空白で

そのままで むこう側に転んだら

なんにも無くて

白紙のようなものがプリンターから

エンドレスに出てくるのかも


ねむい眼をこすりながら ひょい ひょいと

キッチンに降りてきて朝食のパンを焼く

それがルーチンなのだろう

孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。

「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳

〒185-0031
東京都国分寺市富士本1-11-40
TEL&FAX 042(577)0738


イラスト:Googleイラスト・フリーより

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