【孔雀船Vol.92】 ひょいと=苅田 日出美
更新日:2018年8月 9日
ひょいと
むこう側に
寝返りをうつようにして
転がりこむのだろうか
いま6時10分で秒針はすいすいと回っている
ベッドの上から
そんなシーンを眺めている
ひょいと
むこう側へ転がってしまいそうな 朝
暖房のリモコンをONにして
パジャマを脱ぐ
そういえば
これまで生きてきた時間のなかで
ぷっつりと切断された時を
二回だけ経験したことがある
手術のために全身麻酔をされて
気がついたときには何も覚えてはいなかった
夢をみるとか親しい人の声を聞くとかいうこともなく
数時間は空白で
そのままで むこう側に転んだら
なんにも無くて
白紙のようなものがプリンターから
エンドレスに出てくるのかも
ねむい眼をこすりながら ひょい ひょいと
キッチンに降りてきて朝食のパンを焼く
それがルーチンなのだろう
孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。
「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳
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イラスト:Googleイラスト・フリーより