【寄稿・(孔雀船)より】 吉野山の桜 藤井雅人
更新日:2018年2月 1日
渇えた腕のような枝を支えながら
木々は待っていた その時を
なにかが湧きあがりつつあった
ひそかにめぐる 地底の水の廻廊から
それは ただの一瞬
太虚へ駆けのぼるいのちの過剰が
山を埋めつくす 桜花のすがたで
無限と斬りむすぶいのちを眺めながら
ひとはわらい そして泣く
ひとの感受の容れ物は あまりに小さく
無限は 哄笑か号泣となって
そこからあふれ出る
喜びも嘆きも のみこまれる
開花と落花の 慌しい宴のなかに
そして ひとはまた待ちうける
永劫をわたる 桜色の大河が
また山に浮かびあがる時を
【関連情報】
孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。
「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳
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