A040-寄稿・みんなの作品

【寄稿・(孔雀船)より】 吉野山の桜  藤井雅人

渇えた腕のような枝を支えながら

木々は待っていた その時を

なにかが湧きあがりつつあった

ひそかにめぐる 地底の水の廻廊から

それは ただの一瞬



有限が無限に逢うのは いつも一刹那

太虚へ駆けのぼるいのちの過剰が

山を埋めつくす 桜花のすがたで


無限と斬りむすぶいのちを眺めながら

ひとはわらい そして泣く

ひとの感受の容れ物は あまりに小さく

無限は 哄笑か号泣となって

そこからあふれ出る


喜びも嘆きも のみこまれる

開花と落花の 慌しい宴のなかに

そして ひとはまた待ちうける

永劫をわたる 桜色の大河が

また山に浮かびあがる時を


吉野山の桜  藤井雅人 PDF 縦書き


【関連情報】

孔雀船は1971年に創刊された、40年以上の歴史がある詩誌です。

「孔雀船」頒価700円
発行所 孔雀船詩社編集室
発行責任者:望月苑巳

〒185-0031
東京都国分寺市富士本1-11-40
TEL&FAX 042(577)0738

イラスト:Googleイラスト・フリーより

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