【詩集『こんなもん』より】 墓石 = 坂多瑩子
更新日:2016年9月11日
ちょっとうすくなった
おじいさんとおばあさんがいた
あたしは近くの墓石のあいだをわざと走ってみた
ここはよそんちのおはか
おじいさんとおばあさんに教えてやったら
男の子が顔をだした
墓石から墓石を
ぐるぐる走ってふたりでキャッと笑った
男の子は消えた
ほら はようおがみんしゃい
祖母の声だ
おじいさんとおばあさんは
もういなかったけど
じろじろみられているようでいやだった
だから
こんにちわって礼儀正しく挨拶をするけど
なんか照れ臭いというか恥ずかしいというか
相手は墓石なんだけど
墓地に行くと
いっせいに
墓石があたしをじろじろみる
【関連情報】
「こんなもん」 2016年9月30日発行
著者 坂多瑩子
発行所 生き事書房
〒 151-0073
東京都渋谷区笹塚3-45-4
☎ 03-3377-6168