A040-寄稿・みんなの作品

【詩集『こんなもん』より】  墓石 = 坂多瑩子


墓石のうしろに

ちょっとうすくなった

おじいさんとおばあさんがいた


あたしは近くの墓石のあいだをわざと走ってみた

ここはよそんちのおはか

おじいさんとおばあさんに教えてやったら

男の子が顔をだした

墓石から墓石を

ぐるぐる走ってふたりでキャッと笑った

男の子は消えた


ほら はようおがみんしゃい 

祖母の声だ

おじいさんとおばあさんは

もういなかったけど

じろじろみられているようでいやだった


だから

こんにちわって礼儀正しく挨拶をするけど

なんか照れ臭いというか恥ずかしいというか

相手は墓石なんだけど

墓地に行くと

いっせいに

墓石があたしをじろじろみる


【関連情報】

墓石 縦書き PDF

「こんなもん」 2016年9月30日発行 
         著者 坂多瑩子
         発行所 生き事書房 
              〒 151-0073
  東京都渋谷区笹塚3-45-4
              ☎ 03-3377-6168 

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